ぼくはとてもとても江戸が好き。とはいえ、本物の江戸文化がダイスキかっていうと、ちょっと違う。そう、チャンチャンバラバラな、そういう江戸が好きなんです。言ってしまえば、江戸モノの時代劇が好きと言い換えるべきなのか。

本来の江戸は、木戸番なんぞがあって、夜に出歩くのは難しかった。でも、それをそのままやってしまうと、事件も何も起こらなくなる。だから、それはなかったことにしてある世界。より、物語が物語として面白くなるように、ちょっとイジられた世界。そういう江戸が好きなんだよね。

それは言ってしまえば、名探偵がいる現代のような、さ。そんなしょっちゅう、連続殺人事件は起きねえよ!とツッコミをいれることはできても、推理作品にそんな野暮天なツッコミをいれることはないでしょう。それと一緒で、江戸モノも、そういう都合の良さが反映されているものがあるんです。

とはいえ、大体のひとは、江戸モノなんていうのはファンタジーのようなものなんだよね。まあ、ファンタジーも、きっちり踏襲すべき型があって、全てをオリジナルでやると軽薄でつまんなくていけないんだけれども。

口入屋兇次は、そういう意味では、エンタメとしての江戸盛りだくさん。楽しみ放題なんですよ。リアリティを感じさせてくれる仕組みをほうぼうに振りまいているのに、ちゃんと有り得ないことが起こってくれる。そういう作り込みは、ひらひらでもあった。

ぼくが描きたい江戸と似ている。本当に、似ている。だから、好きなんだよなあ。

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